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民泊・旅館の「出口戦略」営業許可を引き継ぐことはできる?事業譲渡時に確認すべきポイント

2026年4月15日

これまで、旅館業(ホテル・旅館・簡易宿所)の営業者が変わる場合、たとえ施設がそのままでも、一度「廃業届」を出し、新オーナーが「新規許可」を取り直す必要がありました。しかし、2023年(令和5年)12月13日施行の改正旅館業法により、この運用が大きく変わりました。

事業譲渡による承継制度の創設

新制度では、事業譲渡の前に都道府県知事等の「事前承認」を受けることで、譲受人は新たな許可を取得することなく、営業者の地位をそのまま引き継ぐことが可能になりました。

  • メリット: 許可の空白期間(営業できない期間)がなくなる。

  • 注意点: あくまで「事前の承認」が必要です。譲渡が終わってから届け出れば良いというわけではなく、スケジュール管理が極めて重要になります。


2. 要注意!「住宅宿泊事業(民泊)」と「旅行業」の取り扱い

「旅館業法」の許可物件と混同されやすいのが、いわゆる民泊新法に基づく「住宅宿泊事業」や「旅行業登録」です。これらは、旅館業法のようなスムーズな承継が認められていないケースが多いため注意が必要です。

住宅宿泊事業法(民泊新法)の場合

住宅宿泊事業(いわゆる届出民泊)には、現在のところ事業譲渡による地位の承継規定がありません。 つまり、事業主が変わる場合は、「現オーナーの廃止届」+「新オーナーの新規届出」というステップを踏む必要があります。この際、消防適合証の再取得が必要になるなど、実務上の負担は依然として残ります。

旅行業登録の場合

旅行業(ランドオペレーター等を含む)についても、吸収合併などの組織再編時であっても、登録そのものを自動的に引き継ぐことはできません。存続会社が事前に新規登録を受けるなどの法務上の手当てが必要となります。


3. 知らないと損をする!観光法務Q&A

Q1. 事業譲渡の「事前承認」申請は、いつまでに行うべきですか?

A. 自治体によって異なりますが、譲渡予定日の約1ヶ月前までには申請を行うのが一般的です。 承認が出る前に譲渡を実行してしまうと、新オーナーは「無許可営業」の状態になってしまいます。また、譲渡後の衛生管理体制や事業方針について保健所の調査が入ることもあるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。

Q2. 契約書に「営業許可の承継」を条件に入れることは可能ですか?

A. 可能です。「行政の承認が得られなかった場合には契約を白紙に戻す」という条項を入れておくことで、譲受人側のリスクを回避できます。和文・英文問わず、こうしたリスクヘッジがM&Aの成否を分けます。

Q3. 外国人スタッフを雇用したまま事業譲渡できますか?

A. 雇用契約を引き継ぐことは可能ですが、在留資格(ビザ)の手続きを忘れないでください。 所属機関の名称や所在地が変わる場合、14日以内に出入国在留管理局へ「所属機関に関する届出」を行う必要があります。これを怠ると、次回のビザ更新に悪影響を及ぼす可能性があります。


4. スムーズな事業譲渡のために準備すべき「3つのリスト」

観光法務の現場運用をルール化し、高値で、かつ確実に売却・譲渡するためのポイントを整理しました。

① 法令遵守(コンプライアンス)の棚卸し

  • 最新の消防設備点検報告書はあるか

  • 宿泊帳簿の備え付け、本人確認ルールは徹底されているか

  • 住宅宿泊管理業者との契約は適切か

② 契約書・約款の整備

譲渡時には、これまでの利用規約や約款も引き継がれます。内容が古かったり、トラブル対応の規定が不十分だったりすると、譲受人にとってのリスクとなり、譲渡価格の減額要因になります。

③ 現場運用のマニュアル化

苦情対応や清掃ルートなどの現場ルールを「見える化」しておくことは、事業の価値を上げます。誰が運営しても同じクオリティが保てる状態こそ、買い手が最も求めるものです。


結びに:専門家を活用するメリット

民泊や旅館の事業譲渡は、単なる不動産の売買ではありません。「許認可」という行政手続きと、「契約」という民事手続きが複雑に絡み合っていますので困ったら専門家へ相談しましょう。

  • この記事を書いた人

Kazuto Sato

観光法務のスペシャリスト(行政書士有資格者) ■ HIS・外資系旅行会社・海外現地法人での実務経験10年以上 ■ 観光業に特化した法務アドバイザーとして活動中 「現場を知るプロ」として、民泊・旅行業・宿泊業の複雑な手続きや法令を分かりやすく解説。事業者の不安を「安心」に変える実務直結型のサポートを提供します。

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